今回は外国人の年金についてお話しします。
外国人も年金を払わないといけなの?
ご存知の方もいらっしゃるとは思いますが、
日本で暮らす全ての人に年金を払う義務と受け取る権利があります。
国民年金は、国籍問わず日本に住所を持つ20歳から60歳までの人が加入する決まりです。
そのうえで、会社員や公務員は厚生年金にも加入します。
老齢年金を受け取れないのは不公平?年金の仕組みについて
年金を短期間(10年未満)納めた外国人が、母国への帰国を予定している場合、
「老齢年金を受け取れないのは不公平」と思う人もいるでしょう。
受け取る可能性がない場合の外国人も年金を納める理由は、
日本の年金制度が自分が納めた分が給付される仕組みではないためです。
「年金」と言うと、「自分が支払った保険料が将来、自分に戻ってくる制度」と考えている方が多いと思いますが、厳密に言うとこれは間違いです。
日本の年金制度は、働いている世代が支払う保険料が現在の高齢者に給付される仕組みです。
つまり、世代間の支え合いによって成り立っていると言えます。
外国人は老齢年期を受給できる?
実は外国人も10年以上年金を納めた場合は、老齢年金を受給することができます。
受給できる条件も日本人同様になります。
けれど日本に住んでいないと、受給資格がないのでは?と思う方もいるかもしれませんが、
これも実は間違いで、日本に住んでいなくとも母国で老齢年金を受給できるのです。
老齢年金の受給資格がない外国人は
とはいえ、納めた期間が10年未満で帰国した外国人は、「老齢年金」の受給資格がないため不利益が生じます。
そのような事態を避けるために、「社会保障協定」や「脱退一時金」といった制度が用意されています。
「脱退一時金」についてはこちら
https://padauknavi.com/最近よく聞く?年金脱退一時金とは?/
「脱退一時金」の受給は、年金を10年未満納めている外国人が対象になります。
言い換えると、10年以上年金を納めている外国人は老齢年金の受給対象者となるため、「脱退一時金」を受け取ることはできません。
また、注意が必要ですが、「脱退一時金」を受け取った場合、受け取るまでに納めた年金期間は無効になります。
社会保障協定とは?
母国で年金に加入している外国人にとっては、日本でも年金に加入することで保険料を二重払いすることになります。
また、日本では老齢年金をもらうためには保険料を10年以上支払う必要があるため、たとえば7年で帰国する外国人は受給資格を得られず、7年分の保険料が掛け捨てになってしまいます。
このような外国人の不利益を避けるために設けられているのが「社会保障協定」です。
社会保障協定は、日本と社会保障協定を締結している国から来た外国人は、日本で働く期間に応じて日本か母国いずれか一方の年金に加入すればいい、とする制度です。
国によって差はありますが、基本的には以下の内容で社会保障協定が結ばれます。
【保険料の二重負担防止】
・日本に在留する期間が5年未満なら、母国の年金に加入するだけでいい。
・日本に在留する期間が5年以上なら、日本の年金に加入するだけでいい。
これらは、保険料の二重負担を防止するための規定です。
【年金加入期間の通算】
・母国での年金加入期間を、日本での年金加入期間と通算できる。
・日本での年金加入期間を、母国での年金加入期間と通算できる。
これらは、保険料が掛け捨てにならないよう、日本での年金加入期間と母国での年金加入期間を通算して、日本もしくは母国で年金を受給できるようにする規定です。
たとえば、日本での年金加入期間が10年に満たなくても、母国での年金加入期間が通算して10年以上になれば、日本の老齢年金をもらえるということです。
当然ですが、社会保障協定の適用を受けるためには、外国人の母国が日本と社会保障協定を結んでいる必要があります。
こちらも当然ですが「脱退一時金」を受け取った場合は、日本の年金加入期間はなくなってしますので、注意が必要です。
社会保障協定発行状況
2022年6月1日時点における、社会保障協定の発効状況は以下のとおりです。日本は23カ国と協定を署名済で、うち22カ国は発効済です。
(注)英国、韓国、イタリア(未発効)および中国との協定については、「保険料の二重負担防止」のみとなります。
協定が発効済の国
外国人の雇用の際に気をつけたいこと
最近になって、技能実習を終えた外国人を雇用した後に、この「脱退一時金」のことがよく問題がとなっています。
その対応は所属機関によって様々です。
一度退職の手続きをとり再度雇用するという企業さんもあれば、その手続きは一切しない企業さん、またある一定の条件を満たした場合に手続きをとってくれる企業さんなど、多様です。
特定技能人材もそれぞれで、「脱退一時金」の手続きをしてくれないのであれば転職を考える、という人もいれば、「脱退一時金」は受け取らなくても大丈夫という人もいます。
こうした問題をできるだけ避けるためにも、雇用の際に所属機関としての方向性をはっきり示した上で、面接・採用することで、後々のトラブルの回避になります。
所属機関として外国人を雇用する際には、企業側がこの年金の仕組みを理解し、また採用する外国人に企業としての対応をきちんと伝えていくことが大切になってくるかと思います。